男性の育休取得について

マーケティング関連のスタートアップ、インサイトテックの調査で、育休取得が義務化されたとしても、男性の約4割が「自分は育休を取得できない」と考えていることが分かったそうだ。

 

取得できないと答えた人は「ただでさえ人手不足なのに、そんな余裕はない」「同僚から仕事が増えるとクレームがくる」といったような声が自由回答ではあったようだ。

 

それでは、日本の父親はどのくらい育児休業を取得しているだろうか。この点、厚生労働省の雇用均等基本調査によれば、1990年代後半の男性の育児休業取得率は1%未満であったのに対し、2017年の男性の育児休業取得率は5%である。男性の育児休業取得率は、少しずつ上昇していることが分かる。もっとも、その水準はかなり低いと言わざるを得ないだろう。ちなみに、OECDの統計(2013)によれば、フィンランド等の北欧諸国の男性の育児休業取得率は70%を超えている。

 

育休を取得することで、キャリアに影響が出る等の懸念が生じるのは仕方ないことだし、これは諸外国でも同じことだ。大切なことは、育休取得を社会的に奨励する雰囲気を醸成した上で、社内の誰かが勇気をもって育休を取得することだろう。それで「問題が起きなかった」ということになれば、本当はみんな取得したいと思っているのだから、自然体で育休取得は増えていくはずだ。

 

そういう意味では、育休を取得させるのは、社内のコア人材のほうがよい。末端の社員が取得すると「おまえが?」という軋轢が大きくなる。それよりも、コア人材に取得してもらって「悪いことではないのだ」というメッセージを会社側が発信していったほうがよい。

 

もっとも、コア人材は「俺は働いているから当然だが、ぶら下がっている奴が取得するのは気にくわない」という態度を示すかもしれない。こういう気持ちが出てくるのは、ある程度、仕方がないことだ。これについては、育休については誰もがフェアに取得できるが、あなたには給与と仕事で報いているのだから良いだろうという形で説得をすれば足りると思われる。

 

いずれにしても、家族を大切にする人間にとって「時間」は取り戻すことのできないかけがえのない財産だ。制度自体をつくることは、さほどむずかしいことではない。大切なことは、「取得してもいいんだよ」というメッセージをどのように社内で発信し、文化にしていくかだろう。