対話ということ

先生:こんにちは。今日はどんなご相談でしょうか?

太郎:対話をするということについてです。

先生:なんだか難しそうですね。何かキッカケがあったのですか?

太郎:昨日、奥さんと話をしていたときに、なんだかハッとしたんです。

先生:ハッとした?

太郎:先生と話をしていると、僕は自分がどんなふうに考えているのかを確認できる。でも、実際の会話になると、途端に自分が何を考えているのか見えなくなるんです。

先生:相手が奥さんであったとしても、ですか?

太郎:そうですね。ペラペラ喋ってしまうというか。

先生:「ペラペラ」という感じが、自分が何を考えているのか見えていないということでしょうか。

太郎:そうですね。本当に自分がそう思っているのか、確かめないまま喋っているというか。

先生:それが「対話」と関係があるのでしょうか?

太郎:「対話」っていうのは、自分が何を考えているのかをお互いに確かめ合いながら、納得できる感覚を深めていく過程のことなんじゃないかと思ったんです。

先生:自分の感覚を確かめ合うことが大切な感じがするのでしょうか。

太郎:そうですね。うまく言えないんですけど、自分が話をしているときに、常に「本当にそう思っているかな?」と問いかけながら相手に喋ることが大切な気がしたんです。

先生:それがうまくいくと、どんな感じがするのでしょうか?

太郎:少なくとも「ペラペラ」喋らないんじゃないでしょうか。

先生:あっはっは(笑)なんだか、太郎さんはよっぽど「ペラペラ」が嫌なんですね。

太郎:嫌になってきたんじゃないかな。「薄っぺらい」というのは、自分が何を考えているのか確かめないままに喋ってる人に感じることなんじゃないかなって思ったんです。いろんな言葉を知っているかどうかは、問題じゃないのかもしれないって。

先生:いろんな言葉を知っていても、ダメなのですか?

太郎:そうじゃないかな。その言葉が「本当にそう思っていること」とつながっていれば大丈夫だと思うんですけど、つながっていなかったら、意味のない言葉がポンポン飛び出しているだけで「薄っぺらい」になるんだと思います。

先生:そうなんですね。

太郎:だから、誰かと話すっていうのは「本当にそう思っているかな?」と問いかけ続けることなんだっていう気がして。自分が喋っているときも、相手が喋っているときも。

先生:それができていれば「早口」であってもペラペラはしていない。

太郎:そうじゃないでしょうか。でも、僕のように慣れていない人は、意識的に「本当にそう思っているかな?」って問いかけないとできないから、自ずとゆっくり喋ることになるんじゃないかな。

先生:ゆっくり喋ることが大切なんじゃなくて、自分に問いかけることが大切なんですね。

太郎:うん、そんな気がします。

先生:横槍になってしまうかもしれませんが、そうやってずっと問いかけ続けていたら「やりたいこと」にもつながっていくような気がしましたね。でも、それはまた別の話だし、僕の興味にすぎませんね。

太郎:いえ、でもそうかもしれません。自ずとそうなるといいな。

先生:そうですね。そしたら、今日はもう時間ですから、また次の機会にしましょう。

太郎:はい、ちょっと自分でもう一度考えてみます。というか、やってみようと思います。

先生:はい、ぜひやってみて、そのときの感覚を教えてください。たのしみにしています。

太郎:はい、ありがとうございます。