旅行にいくことについて

先生:さて、今日はどんなご相談でしょうか?

太郎:今日は、旅行にいくことについてです。

先生:旅行ですか。どこかに行く予定があるのでしょうか?

太郎:実は、それ以前の問題なんです。旅行に行った方がいいのかどうか。

先生:その旅行は、誰と一緒に、いつ行く予定なのでしょうか?

太郎:奥さんと二人で、年末に行く予定です。でも、まだ確定したわけではなくて、奥さんも「あなたが行きたいと思ったら行こう」と言ってくれています。

先生:太郎さんは、旅行に行きたいのでしょうか?

太郎:それが、あまり行きたいと思っていないんです。

先生:そうなんですね。ほかに楽しいことがあるからでしょうか?

太郎:いや、旅行それ自体にあまり興味が持てないんです。ただ、「食わず嫌い」という言葉があるように、僕の思い込みでためらっているだけかもしれないので。

先生:これまでも、旅行に行くことはあったと思うのですが、どんなふうに感じていたのでしょうか?

太郎:そうですね。小学生の頃に、家族でよく「パルケエスパーニャ」という三重県のテーマパークに出かけたのですが、そのときは楽しかったですね。テーマパークは好きなんです。

先生:テーマパークに行くのは好きなんですね。それ以外にも、家族旅行に行った想い出として記憶に残っているものはありますか?

太郎:そうだなあ。父親の仕事の関係で、沖縄にはよく行った気がします。でも、記憶に残っているのは、持っていった書籍が湿気でシワシワになってしまったということでしょうか。それ以外は、何も覚えていません。

先生:そうなんですね。海外旅行についてはどうでしょうか?

太郎:昨年、ヨーロッパに旅行に行ったんです。つい最近の出来事だからということもありますが、いろいろ思い出すことがあります。

先生:その中でも、一番想い出に残っていることはなんでしょうか?

太郎:食事ですね。ドイツの大聖堂の近くにあるレストランで食べた肉料理は絶品でした!

先生:太郎さんは、食事が大好きなんですね。記憶に残る景色なんかは、あったりしましたか?

太郎:スイスのユングフラウヨッホの山頂から眺める景色は圧巻でした。本当に美しかったです。あれは、まさしく「そこにしかない景色」で、行って良かったと思っています。

先生:その感覚を、もう一度味わいたいと思うことはないのでしょうか?

太郎:う〜ん、どうだろう。無いかもしれないですね。どちらかというと、料理のほうがこだわりが強いかもしれません。美味しいものがそこにしか無いならば、行っても良いかもしれませんね。

先生:なるほど。旅行といっても、目的はたくさんありますからね。太郎さんの場合は「美味しい料理を食べたい!」という気持ちのほうが「絶景を眺めたい!」という気持ちよりも強いのかもしれません。

太郎:そうですね。「美味しいものを食べに行こう!」ということであれば、行くかもしれません。

先生:そしたら「まだ行っていないテーマパークに行こう!」だったらどうですか?

太郎:そうですね、行くかもしれない。先生、もしかしたら「自分が好きなことのために、ある場所に赴く」ということなら、あまり苦にならないということなのかもしれません。

先生:つまり、太郎さんは「旅行に行こう」と誘われると、そこで自分の好きなことができるかわからないから、嫌だということでしょうか?

太郎:そうかもしれません。旅行といっても、目的はいろいろなんだと思います。食い道楽なのかもしれないし、ひたすら絶景を求めて歩き回ることになるかもしれない。「どこに行くのか?」よりも先に「何をしに行くのか?」が決まらないと、どこにも行きたくないんだと思います。

先生:そうすると、太郎さんは「旅行に行きたくない」というよりも「なんとなくどこかに行くのが嫌だ」ということなのでしょうか?

太郎:うん、そんな気がします。旅行それ自体は嫌いじゃないはずです。実際、奥さんと一緒に行った博多はすごく楽しかったんですよ。海鮮料理が本当に美味しかったから!

先生:それは、太郎さんが食べることが大好きだからでしょうね。

太郎:先生、ありがとうございます。ちょっと、奥さんと話し合ってみます。「海外旅行に行きたいかどうか」じゃなくて「自分は何がしたいか」ということから話してみます。そのときに「海外」に出かけたほうが素敵な想い出がつくれると思えるかどうかを、奥さんに相談してみます。

先生:そうですね。奥さんはあなたの気持ちを尊重してくれる人だと思いますから、まずは素直に話してみてください。ただし、あなたが素直に気持ちを表現するのだから、奥さんの気持ちもしっかり聴くのですよ。そしたら「二人でやりたいこと」を一緒に実現できるはずです。年末が楽しみですね。

太郎:ありがとうございます。また進展があったら報告させてください。

先生:はい、いつでもどうぞ。